情報計数学科30周年記念誌


夏期休業中にて


和太 幸子(24期生)


現在私は、学生と同様、約40日の間の夏休みを過ごしています。宇部短期大学を 卒業後、県内の商業高校で“実習助手“という職業に就いて、今年で7度目の夏を迎 えました。

実習助手とは、聞き慣れない職種ではないでしょうか。県内に7校ある公立の商業 高校の実習助手は、各学校により仕事の内容が違うのですが、私の仕事の中心は、週 20時間程度の授業(情報処理実習の補助)と、部活動の指導(情報処理部)、そして公 務分掌の仕事です。クラス担任はもったことはなく、“教諭“との一番の大きな違い は、独自に授業を持てないことでしょう。

体育祭、文化祭、修学旅行、遠足・・・と、いろいろな行事を生徒たちと体験して いるので、華やかな部分だけ見れば、私の職業を羨ましく思われる方も多いようです。 「夏休みが40日。」というだけで、教職に興味のない人だって、興味がわくはずで す。しかし、実際はそう甘くはありません。長期休業中は、授業がないおかげで、容 赦なく研修や出張が連続します。今年は夏休みの半ばまで、部活指導等と重なって、 日曜日の休みもないほどの忙しさでした。しかも、クーラーのない教室での部活動は、 成人した身には結構堪えるのです。部活の内容も半端ではなく、「通産2種」合格を 目指しているため、毎日朝から、ときには夕方まで、暑い教室での講義が続きます。

短大を卒業して、通産2種の内容全てを教えられる人がどのくらいいるのでしょう か。自慢ではありませんが、私はお世辞にもよく勉強した方ではなかったので、最初 の3年間ぐらいは、ずいぶんきつい思いをしました。新しい環境の中で、プライドも あるので「わからない。」とは言いたくないし、“配列“の概念もおぼろげに理解し た程度で、卒業してしまったため、短大での知識は最初の数ヵ月で売り切れてしまう し、情けないものでした。そして、7年目の現在でもまだまだ学ぶべきことは多く、 “修行“の毎日です。

今年の夏休みにおける、私にとっての最大のイベントは、“富士登山“と、“全国 高等学校プログラム競技大会への参加“でした。後者は、商業高校生が、「流れ図作成 」「プログラム作成」「関連知識とトレース」という3部門について、各30分間で 問題を解き、点数を競うという大会で、今回が6回目にして初めて県代表として参加 できることになりました。今まで代表で参加した学校が、全て入賞しているため、正 直言ってプレッシャーがありました。

「結果よりも、大会までの過程で何をしたか、どれだけのことができたのかが重要だ。 」と、生徒に繰り返しながら、同時に自分に言い聞かせ、納得しようとしていた気が します。それは、大会での結果が、同時に私の「結果」でもあったからです。

そして8月5日大会当日、下位入賞ではありましたが、47都道府県中10位とな り、私はとても満足しています。自分が最終的な所では手が出せないことや、この暑 かった夏に、文句も言わず(たまには言っていましたが)、熱心に取り組む生徒の姿を 見ているからこそ、喜びも大きいものでした。生徒にとっても、276名の選手の1 人として、県代表であるという緊張感の中で、集中して問題を解き、日頃の成果を 出せたことは、自信につながったようです。「今の仕事は、楽しいでしょう。」とか 「充実しているでしょう。」と言われることがよくあります。正直言って否定はでき ませんが、素直に肯定できないのも本音です。それでも、ごくまれに、今回の全国大 会のように、それまでの嫌なこと全てをクリアできるほどの、幸せな気持ちにさせて もらえることもあるので、なかなかこの職業を手放そうという気にはなれません。 ところで、私には密かな楽しみがあります。それは、卒業して大学にいった生徒が 長期の休みを利用して訪ねてくれたり、社会人となった生徒にテニスやカラオケ、 お酒を飲みに誘ってもらうことです。短大を卒業後、20歳になったばかりで“先生 “として関わったときの私よりも、既に彼らの方が年齢が上になりました。そのころ は、「学生」から「教える側」への転身や、知識面、精神面の未熟さから、同僚や生 徒にどう接したらよいか、悩むことも多かったように思います。しかし、こうして卒 業してからの彼らと接することで、7年間の充実した日々を、実感させられるのです。 そしてこれから先も、生徒にプラスとして関わりたいという気持ちにもなるのです。

宇部短期大学を卒業後、この職業に就けた幸運を、大切にしようと思います。

(防府商業高等学校))


宇部フロンティア大学短期大学部(旧 宇部短期大学)