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第十段  天河屋の段

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daijyuu dan
底本の一部

(1996年1月14日現在)
¥T 第十 *
L10¥J地ハル¥¥津の国と/和泉河内{いつみかはち}を引「キ」受「ケ」て。¥Jウ¥¥/余所{よそ}の国X/舟{ふね}よせる三国一の¥Jウ¥¥大/湊{みなと}。¥Jウ¥¥堺と
いふて人の気も¥Jウ¥¥/賢{さかし}き町に¥J中¥¥/疵{きづ}もなき。¥Jウ¥¥/天河{あまかは}屋の義平迚金から金を¥Jウ¥¥/設溜{まふけため}。¥Jハル¥¥見
かけは/軽{かる}く/内証{ないしやう}は/重{おも}い/暮{くらし}に¥Jウ¥¥/重荷{おもに}をば。¥Jウ¥¥手づから/見世でしめくゝり大舩の¥J中¥¥/舩頭{せんどう}。
¥J詞¥¥/是でてうど七/竿{さほ}。¥J地ハル¥¥請取ましたと指/荷{にな}ひ。¥Jウ¥¥行も/黄昏{たそかれ}/亭主{ていしゆ}は¥J中¥¥ほつと。¥Jウ¥¥日/和{より}も
よしよい出舩と。¥Jハル¥¥いひつゝたばこきせる/筒{づゝ}。¥Jフシ¥¥すい付「ケ」にこそ入にけれ。¥J地中¥¥家の/世継{よつぎ}は¥Jウ¥¥/今
年{ことし}四つもりは十九の丸/額{びたい}。¥Jハル¥¥親方よりも我「カ」遊び。¥J詞¥¥サア始りしや++。/面白{おもしろ}い事++。
なき/弁慶{べんけい}のしのだ/妻{づま}。とうざい++¥J文弥ハルフシ¥¥爰に/哀{あはれ}を。¥J中¥¥とゞめしは。¥Jハル¥¥此よし松にとゞめたり。¥J詞¥¥/元来{もとより}其
身は父計「リ」。¥Jハル¥¥母は/去{さら}れて。いなれたで。¥Jフシ¥¥/泣{なき}弁慶と申なり。¥J詞¥¥コリヤ伊五よ。もふ/人形{にんじよう}廻しいや++。
/嚊{かゝ}さんを呼「ン」でくれいやい。ソレ其様にむり言しやると。/旦那{だな}様「ン」にいふてこなはんも追「イ」出さ
すぞ。跡の月からおかまがわれて。手代は手代て/鼠{ねづみ}の子か何「ン」ぞの様に。目が明「カ」ぬといふ
て追出し。/飯焚{めしたき}は大きな/欠{あくび}したといふて隙やり。今ではこなはんと。わしと旦那はんと計「ツ」。
どふで此内を抜「ケ」そけするのかして。ちよこ++舟へ/荷物{にもつ}が行。/欠落{かけおち}するなら人「ン」形/箱{ばこ}持「ツ」
ていこふぞや。イヤ人「ン」形廻しよりおりやもふねたい。アレもふおれXをそゝのかす程にの。よごさ
るはおれが/抱{たい}て寐てやろ。いやじや。なぜに。われには/乳{ちゝ}がない物おりやいやじや。アレ又/無
理{むり}いはしやる。こなたが女「コ」の子なら。乳よりよい物か有けれど。何をいふても相「イ」/聟同士{むこどし}。¥Jフシハル¥¥是
も涙の/種{たね}ぞかし。¥J地ウ¥¥折節表「テ」ヘ侍二人「ン」/誰{たそ}頼ふ¥Jウ¥¥義平殿は¥Jウ¥¥お宿にかと。¥Jハル¥¥いふもひそめく内か
らつこど。¥J詞¥¥旦那様「ン」は内に。我「レ」等。¥Jサハリハル¥¥人形廻しで¥Jウナヲス¥¥いそがしい。¥J詞¥¥用があらばはいつた++。イヤ案内致さぬも
無礼。原郷右衛門大星力弥。/密{ひそかに}に御意得たいと申ておくりやれ。何「ン」じや腹へり右衛門。大
/食{めし}/喰{くひ}や。こりやたまらぬアレ旦那様「ン」大きなけないどが見へました。¥J地ハル¥¥と/叫{さけ}ぶよし松¥Jウ¥¥引「キ」連「レ」て
¥Jフシ¥¥奧へ入「レ」ば。¥J地色ウ¥¥亭主¥J色¥¥義平。¥J詞¥¥又あほうめがしやなり声と。¥J地ハル¥¥言つゝ出て。¥J詞¥¥ヱ郷右衛門様力弥様。サア
まあ是へ。¥J地ウ¥¥御免「ン」有「レ」と¥Jハル¥¥座をしめて¥J色¥¥郷右衛門。¥J詞¥¥段々/貴公{きこう}のお/世話{せわ}故万「ン」事相/調{とゝの}ひ。由良「ノ」助
もお礼に参る/筈{はづ}なれ共。鎌倉へ出立「ツ」も今「ン」明日。/何角{なにか}と取込「ミ」C「レ」力弥を名代として/失
礼{しつれい}のお/断{ことはり}。是は++御念の入た義。急に御/発足{ほつそく}とござりますれば。何角お取込「ミ」でごさり
ませうに。成「ル」程郷右衛門殿の仰の通「リ」。明早々出「ツ」立の取込。/自由{じゆう}ながら私に参りお礼も
申。又お頼申た跡/荷物{にもつ}も。/弥{いよ++}今晩「ン」で/積{つみ}仕廻か。お尋申せと申渡しましてござり
ます。成「ル」程お/誂{あつらへ}の/彼{かの}道具一「チ」まき。段々大廻しで遣はし。小手/臑当{すねあて}小道具の類「イ」は。
長持「チ」に仕込「ミ」以上七/竿{さほ}。今「ン」晩出「ツ」舩を幸「イ」/舩頭{せんどう}へ渡し。残るは/忍挑灯鎖鉢巻{しのびちやうちんくさりはちまき}。
是は/陸荷{おかに}で跡より遣はす/積{つも}りてござります。郷右衛門様お聞なされましたか。いかゐお/世
話{せわ}でござりまする。いか様主人塩冶公の御恩を受「ケ」た町人も/多{おゝ}ござれ共。天河屋の義平
は。武士も及ばぬ男気な者と。由良殿が見込大事をお頼申されたも尤。/併{しかし}鑓長刀
は格/別{へつ}。/鎖帷子{くさりかたびら}の/継梯子{つぎはしご}のと申「ス」物は/常{つね}ならぬ道具。お買なさるゝにふしぎは立「チ」ませなん
だかな。イヤ其義は。細工人へ手前の所は申さず。手附「ケ」を渡し金と引かへに仕る故。いつくの
誰と先「キ」様には存「ジ」ませぬ。成「ル」程尤。次手に力弥めもお尋申ましよ。内へ道具を取「リ」
込/荷物{にもつ}の/拵{こしら}へ御家来中の見る目はどふしてお忍びなされましたな。ホウ夫「レ」も御尤の
お尋。此義を頼まれますると。女房は親里へ帰し。召「シ」/使{つかひ}は/垂邪{たりひづみ}を付「ケ」て。段々に隙遣はし。
残るはあほうと四つに成「ル」C。/洩{もれ}る筋はござりませぬ。扨々驚「キ」入ましてごさりまする。
其/旨{むね}を親共へも申聞して/安堵{あんど}させませう。郷右衛門殿お立なされませぬか。いか様出「ツ」/達{たつ}に
心せきまする。義平殿お/暇{いとま}申ませう。然らば由良助様へも。/宣{よろ}しう申聞「カ」しませう。おさ
らば。¥J地中¥¥さらばと引「キ」別「カ」れ¥Jフシ¥¥二人は/旅宿{りよしゆく}へ立帰る。¥J地ウ¥¥表「テ」しめんとする所へ¥Jウ¥¥此家の/舅{しうと}¥Jハル¥¥大田¥J色¥¥/了竹{れうちく}。
¥J詞¥¥ヲツトしめまい/宿{やど}にかと。¥J地ハル¥¥ずつと通つてきよろ¥J色¥¥++眼。¥J詞¥¥是は親仁様ようこそお出。扨此間は女
房そのを/養生{やうじやう}がてら遣はし置「き」。/嘸{さそ}お/世話{せわ}お薬でも/給{たべ}まするかな。ア薬も呑「ミ」ます
る/食{しよく}も/喰{くひ}ます。夫「レ」は/重畳{ちやう※※}。イヤ重畳でござらぬ。手前も国元「ト」に居た時は。
/斧{おの}九太夫殿から/扶持{ふち}も/貰{もら}ひ/相応{さうおう}の/身代{しんだひ}。今は一「チ」/僕{ぼく}さへ召「シ」使はぬ所へ。さしてもない
病気を/養生{やうじやう}さしてくれよと指越「サ」れたは。子細こそあらん。ガ夫「レ」はとも有「レ」。/生{なま}若「カ」い女
ふ/埓{らち}が有ては貴殿も立「タ」す。身共も/皺{しは}腹でも切ねばならぬ。所て一つの/相談{さうだん}。先世間「ン」は
隙やり分「ン」。/暇{いとま}の状をおこしておいて。ハテ何「ン」時でも爰の勝「ツ」手に。呼戻すXの事。たつた一「ト」筆
つい書て下されと。¥J地ハル¥¥/軽{かる}ういふのも物/工{だくみ}。¥Jウ¥¥一「チ」/物{もつ}有と知「リ」ながら。¥Jウ¥¥いやといはゞ女房を直「ク」に戻さん戻り
ては。¥Jウ¥¥頼まれた人々へ詞も立ずと取「ツ」つ置つ/思案{しあん}する程¥J詞¥¥いやかどふじやふ/得心{とくしん}なら此
方にも。片時「キ」置「カ」れず戻すからは此了竹もにじり込「ミ」。へたばつて倶に/撹{やつかい}いやか/応{おう}かの
/返答{へんたう}と。¥J地ウ¥¥込付「ケ」られて/遉{さすが}の義平。¥Jウ¥¥工に乗「ル」が口/惜{おし}やと。¥Jウ¥¥思へどこちらの一「チ」大事¥Jハル¥¥見出され
てはと¥J中¥¥かけ/硯{すゞり}。¥Jウ¥¥取「ツ」て引「キ」寄「セ」さら++と。¥Jフシ¥¥書「キ」/認{したゝ}め。¥J詞¥¥是やるからは了竹殿親でなし子でなし。/重{かさね}て
/足踏{あしぶみ}お仕やんな。/底工{そこたくみ}有「リ」/暇{いとま}の状。/弱身{よはみ}をくふてやるが残「ン」念「ン」。持「ツ」ていきやれと投付「ク」れば。
¥J地ハル¥¥手早く取「ツ」て¥J色¥¥/懐中{くはいちう}し。¥J詞¥¥ヲヽよい/推量{すいりやう}。聞「ケ」ば此間より浪人共が入込「テ」ひそめくより。そのめにとへ共
しらぬとぬかす。何仕出そふも知「レ」ぬ聟。娘を/添{そは}して置「ク」が気づかひ。幸「イ」去「ル」/歴{れき}々から
/貰{もらひ}かけられ。去「リ」状取「ル」と直「ク」に嫁入さする/相談{さうだん}。一ぱいまいつて/重畳{てうちやう}++。ホウ/譬{たとえ}去「リ」状なき
迚も子Xなしたる夫「ト」を捨。外「カ」へ嫁入する/性根{しやうね}なら心は残らぬ勝「ツ」手++。ヲヽ勝手にするは親
のこうけ。/今宵{こよひ}の内に嫁らする。ヤア/細言{こまごと}はかずと早帰れと。¥J地ウ¥¥/U{かたさき}/掴{つかん}で¥Jハル¥¥門「ト」口より。¥Jウ¥¥外「ト」へ/蹴{け}出し
て跡ぴつしやり。¥Jウ¥¥ほう++/起{おき}て¥J詞¥¥コリヤ義平。なんぼ/掴{つかん}でほり出しても。嫁らす先「キ」から/仕{し}/拵{そろ}へ金。
/温{あたゝ}まつて/蹴{け}られたりや。どふやら/疝{せん}気が/直{なを}つたと。¥J地ハル¥¥口は達「ツ」者に足腰を/撫{なて}つさすりつ迯
ぼへに。¥Jヲクリ¥¥つぶやきS++立帰る。¥J地色ウ¥¥月の/曇{くもり}にかげ/隠{かく}す¥Jウ¥¥/隣家{りんか}も¥Jハル¥¥寐入「ル」/亥{い}の/刻{こく}過「キ」。¥Jウ¥¥此家をめがけ
て/捕{とり}手の人敷¥Jウ¥¥十「ツ」手早/縄{なは}¥J中¥¥腰/挑灯{てうちん}。/灯{ひ}かげを隠して/窺{うかゝ}ひ++¥Jウ¥¥犬とおぼしき家来を/招{まねき}。
¥Jウ¥¥/耳{みゝ}打すれば指心得¥Jハル中¥¥門「ト」の戸せはしく¥J中¥¥打たゝく。¥J色¥¥誰「レ」じや。++も¥Jハル¥¥及びごし。¥J詞¥¥イヤ/宵{よひ}にきた大舟の/舩頭{せんど}
でござる。舟/賃{ちん}の/算用{さんよう}が/違{ちが}ふた。ちよつと明「ケ」て下され。ハテ/仰山{ぎやうさん}な。/纔{わづか}な事であろあす
来た++。イヤ今「ン」夜うける舟。仕切て/貰{もら}はにや出されませぬと。¥J地色ウ¥¥いふもこは高近「ン」所の聞へと。
¥Jウ¥¥義平は立出何心なく¥Jハル¥¥門の戸を。¥Jウ¥¥明「ク」ると其儘/捕{とつ}た++。¥J色¥¥/動{うご}くな上意と追取巻「ク」。¥Jウ¥¥コハ何故
と四方八方。¥Jウ¥¥眼を/配{くば}れば¥Jハル¥¥/捕手{とりて}の¥J色¥¥両人。¥J詞¥¥ヤア何故とは/横道{わうだう}者。/儕「レ」塩冶判官が家来大
星由良「ノ」助に頼れ。/武具馬具{ぶぐばぐ}を/買{かひ}調へ大廻しにて鎌倉へ遣はす条。急「キ」召「シ」捕「リ」拷
問{がうもん}せよとの御上意。/遁{のか}れね所じや腕廻せ。是は思ひも寄「ラ」ぬお咎。左様の覚/聊{いさゝか}なし。¥J地色ウ¥¥定て夫「レ」
は人違へと¥Jハル¥¥いはせも立「テ」ず。¥J詞¥¥ヤアぬかすまい。/争{あらそ}はれぬ/証拠{しやうこ}有。ソレ家来共。¥J地色ハル¥¥はつと心得持来るは。¥Jウ¥¥/宵{よひ}
に/積{つん}たる/莞筵荷{ござに}の長持。¥Jウ¥¥見るより義平は心も空。¥Jウ¥¥ソレ/動{うご}かすなと四方の¥J中¥¥十「ツ」手。¥Jウ¥¥其間
に荷物を切/解{ほど}き。¥Jウ¥¥長持明「ケ」んと¥Jハル¥¥する所を。¥Jウ¥¥飛かゝつて下「モ」部を/蹴{け}/退{のけ}。¥Jウ色¥¥/蓋{ふた}の上にどつかと¥J色¥¥す
はり。¥J詞¥¥ヤア/麁忽{そこつ}千万「ン」。此長持の内に入置「イ」たは。去「ル」大名の奥方より。お/誂{あつら}へのお手道具。お
/具足櫃{ぐそくひつ}の笑ひ本。笑ひ道具の/注文{ちうもん}X其名を/記{しるし}置「イ」たれば。明「ケ」さしては/歴{れき}々のお
家のお名の出る事。御/覧{らん}有「ツ」てはいづれものお身の上にもかゝりませうぞ。ヤア/弥{いよ++}/胡乱{うろん}者。
中々大/抵{てい}では白状致すまい。ソレ申「シ」合せた通「リ」。¥J地色ウ¥¥合点でござると¥Jハル¥¥一「ト」間へかけ入。¥Jウ¥¥一子よし松を
¥J色¥¥引「ツ」立「テ」出。¥J詞¥¥サア義平。長持の内はとも有「レ」。塩冶浪人一/流{とう}に/堅{かた}まり。師直を討「ツ」/密事{みつじ}の
段々。儕「シ」能「ク」しつつらん。有やうにいへばよし。いはぬと/忽{たちまち}C「レ」が身の上。¥J地色ウ¥¥コリヤ是を見よと¥Jハル¥¥抜「キ」刀。/稚{おさな}
き/咽{のど}に指付「ケ」られ。¥Jウ¥¥はつとは思へど色も¥J色¥¥/変{へん}ぜず。¥J詞¥¥ハヽヽヽヽ女/童{わらべ}を/責{せめ}る様に。人/質{しち}取ての御/詮
義{せんぎ}。天河屋の義平は男でござるぞ。子に/羈{ほださ}れ存「ン」ぜぬ事を。存「ン」たとは得申さぬ。/嘗{かつ}
て何にも存ぜぬ。しらぬ。知「ラ」ぬといふから/金輪{こんりん}ならく。/憎{にく}しと思はゞ其/C{せがれ}。我「カ」見る所で殺し
た++。テモ/胴性骨{どしやうぼね}の/太{ふと}いやつ。/管鑓{くだやり}/鉄炮{てつほう}/鎖{くさり}/V{かたびら}。四十六本の印「シ」X/調{とゝの}へやつたる/儕「レ」が。/知「ラ」
ぬといふていはしておこふか。白状せぬと一寸/様{だめし}。一/分{ぶん}/刻{きさみ}に刻むが何「ン」と。ヲヽ、/面白{おもしろ}い/刻{きざま}れう。武具
は/勿論{もちろん}。/公家{くけ}武家の/冠鳥帽子{かんむりゑぼし}。下女小者が/藁沓{わらくつ}X。/買調{かひとゝの}へて売「ル」が/商人{あきんど}。それ
ふしぎ迚御詮「ン」義あらば。日本に人/種{だね}は有「ル」まい。一寸「ン」だめしも三寸縄も。/商売{しようばい}故に取るゝ
命。/惜{おし}いと思はぬサア殺せ。/C{せが}「レ」も目の前突「ケ」++++。¥J地ハル¥¥一寸「ン」試「シ」は/腕{うで}から切「ル」か胸から/裂{さく}か。¥Jウ¥¥/肩骨{かた
ぼね}/背骨{せほね}も望次第と。¥Jウ¥¥指付「ケ」突付「ケ」我子を¥J中¥¥もぎ取。子に/羈{ほださ}れぬ/性根{しやうね}を見よと。
¥Jウ¥¥しめ殺すべき¥J色¥¥其/吃相{きつさう}。¥J詞¥¥ヤレ/聊尓{れうじ}せまい義平殿。暫し++と長持より。¥J地色ウ¥¥大星由良助よし金。
¥Jウ¥¥立出る/体{てい}¥Jハル¥¥見て/恟{びつく}り。¥Jウ¥¥捕「リ」手の人※※一「ツ」時に。¥Jウ¥¥十「ツ」手捕「リ」縄打捨て¥Jフシ¥¥/遥{はるか}さがつて座をしむる。¥J地色ハル¥¥/異{ゐ}
義を/正{たゞ}して由良「ノ」助¥Jウ¥¥義平に向ひ¥J中¥¥手をつかへ。¥J詞¥¥扨々驚「キ」入たる御心底。¥J地色ハル¥¥/泥中{でいちう}の/蓮{はちす}。¥Jウ¥¥/砂{いさご}の中の
金「ネ」とは貴公の¥J中¥¥御事。さもあらんさもそふづと。¥Jウ¥¥見込「ン」で頼んだ¥Jハル¥¥一大事。¥Jウ¥¥此由良「ノ」助は/微塵聊{みちんいさゝか}。
¥Jウ¥¥お疑ひ¥J色¥¥申さね共。¥J詞¥¥/馴染{なじみ}近「カ」付「キ」でなき此人※※。四十人/余{よ}の中にも。天河屋の義平は生れながら
の町人。今にも/捕{とらへ}られ詮「ン」義にあはゞ。いかゞあらん。何かといはん。殊に/寵愛{てうあい}の一「ツ」子も有「レ」ば。子
に/迷{まよ}ふは親心と/評議{ひやうぎ}/区{まち}々。案じに胸も休まらず。¥J地ウ¥¥所詮一心の定めし所を見せ。¥Jウ¥¥/古傍
輩{こほうばい}の者共へ/安堵{あんど}¥Jハル¥¥させん為。¥Jウ¥¥せまじき事とは存ながら右「キ」の仕合。¥Jウ¥¥/麁忽{そこつ}の段は¥J中¥¥まつひら++。
¥J詞¥¥花は桜木。人は武士と申せ共¥J地ハル¥¥いつかな++武士も及ばぬ御所存「ン」。百万「ン」騎の/強敵{がうてき}は/防{ふせぐ}共。
¥Jウ¥¥左程に/性{しやう}根はすはらぬ物。¥Jウ¥¥貴公の一心をかり受「ケ」我「レ」々が手本とし。¥Jウ¥¥敵師直を討「ツ」ならば/誓{たとへ}。
¥Jウ¥¥/巌石{かんせき}の中に/篭{こも}り。/鉄洞{てつとう}の内に隠るゝ¥Jウ¥¥共やはか/仕損{しそん}じ¥J色¥¥申「ス」べき。¥J詞¥¥人有「ル」中にも人なしと申せ共。
/町家{ちうか}の中にも有「レ」ば有「ル」物。¥J地色ウ¥¥一「チ」味/徒党{ととう}の者共の¥Jハル¥¥為には。¥Jウ¥¥/生土{うぶすな}共。氏神「ン」共/尊{たつとみ}奉らずんば。¥J上¥¥御/恩{おん}
の/冥加{めうが}に¥J中¥¥/尽{つき}果ませう。¥J詞¥¥/静謐{せいひつ}の代には/賢者{けんしや}も顕はれず。ヱヽ/惜{おし}いかな。¥J地フシ¥¥/悔{くや}しいかな。¥J中¥¥/亡君{ぼうくん}
御存「ン」/生の¥Jハル¥¥折ならば。¥Jウ¥¥一方の/籏{はた}大将。¥Jウ¥¥一国の/政道{せいたう}。¥Jウ¥¥お預け申「シ」た迚惜からぬ¥J中¥¥御/器量{きりやう}。¥J詞¥¥是に
/並{なら}ぶ大/鷲{わし}文吾/矢間{やさま}重太郎を始め。小寺高松堀尾板倉片山等/潰{つぶれ}し眼を/開{ひら}か
する。¥J地色ハル¥¥妙薬/名医{めいゐ}の/心魂{しんこん}。¥Jウ¥¥有がたし++とすさつて三/拝{はい}人々も。¥Jウ¥¥不/骨{こつ}の段/真平{まつひら}と/畳{たたみ}に。/頭{かしら}
を¥J中¥¥/摺{すり}付「ク」る。¥J詞¥¥ヤレ夫「レ」は御/迷惑{めいわく}お手上「ケ」られて下さりませ。/惣体{そうたい}人と馬には。乗「ツ」て見よ/添{そふ}て見
よと申せば。お/馴染{なじみ}ない御/旁{かた※※}は気づかひに思召「ス」も尤。私元「ト」は/軽{かる}い者。お国の御用承はつて
より。/経{へ}上「カ」つた此身「ン」代。判官様の様子承はつて/倶{とも}に無念「ン」。何/卒{とぞ}此/恥辱{ちじよく}/雪{すゝぎ}やうはないか
と。りきんで見ても/泰亀{いしがめ}のじだんだ。及ばぬ事と存「ジ」た所へ。由良「ノ」助様のお頼。こそ心
得たと向ふ見ず。倶にお力付「ケ」る計「リ」。¥J地色中¥¥情ないは町人の身の上。¥Jウ¥¥手一合でも御/扶持{ふち}を/戴{いたゝき}まし
たらば。¥Jウ¥¥此度の思し立。¥Jウ¥¥袖つまに取付「イ」て成「リ」共お供申。¥Jウ¥¥いづれも様へ/息{いき}つぎの。¥Jウ¥¥茶水でも/汲{くみ}
ませう¥J中¥¥に。¥J詞¥¥夫「レ」も叶はぬは。よく++町人はあさましい物。是を思へばお主の御/恩{おん}。刀の/威光{ゐくはう}は有かた
い物。¥J地ハル¥¥それ故にこそ¥Jウ¥¥お命捨らるゝ。御/羨{うらやま}しう¥J色¥¥存まする。¥Jウ¥¥猶も/冥途{めいど}で御奉公。お/序{ついで}に
義平めが。¥Jウ¥¥/志{こゝろざし}もお/執成{とりなし}と¥Jウ¥¥あつき詞に人※※も。¥J上¥¥思はず涙¥Jキン¥¥/催{もよほ}して¥Jフシ中ハル¥¥/奧歯{おくば}。/噛割{かみわる}計也。
¥J地色ノル¥¥由良「ノ」助¥J色¥¥取あへず。¥J詞¥¥今「ン」晩鎌倉へ出立。本「ン」望/遂{とぐ}るも百日とは/過{すご}すまじ。承はれば。
御/内証{ないしやう}X/省{はぶき}給ふ由重々のお/志{こゝろさし}。追付「ケ」夫「レ」も呼返させ申さん。¥J地色ハル¥¥御不/自由{じゆう}も今
暫く。¥Jフシ¥¥早お/暇{いとま}と立上る。¥J地ハル¥¥ヤレ申さばめで度旅立。¥Jウ¥¥いつれも様へも御酒一つ。¥J詞¥¥いや夫「レ」は。ハテ
扨/祝{いは}ふて手打の/蕎麦{そば}切。ヤ手打とは吉/相{さう}。然らば大/鷲{わし}/矢間{やさま}御両人は跡に残「リ」。
先「キ」手組の人※※は。郷右衛門力弥を/誘{さそ}ひ。佐田の/森{もり}Xお先「キ」へ¥J地色ハル¥¥いさこなたへと/亭主{ていしゆ}が案「ン」
内。¥Jウ¥¥お/辞義{じぎ}は無礼と¥J中¥¥由良「ノ」助¥Jヲクリ¥¥二人をS伴ひ¥J中¥¥入「ル」月と。¥Jハルフシ¥¥又出る¥J中¥¥月と。 二つ輪の¥Jウ¥¥親と/夫{つま}と
の¥Jハル¥¥中に立「ツ」。¥J長地¥¥おそのは一人小/挑灯{ちやうちん}¥Jウ¥¥くらき思ひも。¥Jキンフシ¥¥子故の/闇{やみ}。¥Jウキン¥¥あやなき門を¥J色¥¥打たゝき。¥J詞¥¥伊五よ++
と呼声が。¥J地色ハル¥¥寐耳にふつとあほうは¥J色¥¥かけ出。¥J詞¥¥おれ呼「ン」だは誰「レ」じや。/化生{けしやう}の者か。/迷{まよ}ひの者か。イヤそ
のじや/爰明てくれ。そふいふても気味が悪「ル」い。必ばあといふまいぞと。¥J地色ハル¥¥言つゝ門「ト」の¥J色¥¥戸押「シ」
ひらき。¥J詞¥¥ヱヽおゑさんかようごんしたの。一人「リ」あるきをすると。ナ/病犬{やまひいぬ}が/噛{かむ}ぞへ。ヲヽ犬に成¥「リ」共かまれ
て死「ン」だら。今の思ひは有まいに。おりや/去{さら}れたはいやい。どんな事にならんしたなア。旦那殿はねて
か。イヽヱ。/留主{るす}か。イヽヱ。何「ン」の事じやぞやい。何「ン」の事やらわしもしらぬが。宵のくちに/猫{ねこ}が/鼠{ねづみ}を
取「ツ」たかして。とつた++と大勢来たが。ちやつとおれは/蒲団{ふとん}かぶつたればつゐ¥Jウ¥¥寐入た。今其わ
ろ達「チ」と奥で酒/盛{もり}ざゞんざやつてゞござんす。¥Jハテ¥¥合点のいかぬそふしてぼんはねたか。アイ
是はようねてゞござんす。旦那殿とねたか。イヽヱ。われとねたか。イヽヱ。つゐ一人「リ」ころりと。な
ぜ/伽{とぎ}してねさしてくれぬ。夫「レ」でもわしにも旦那様「ン」にも。乳がないといふて泣てばつかり。ヘヱヽ
/可愛{かはひ}やそふであろ++。¥J地上¥¥夫「レ」ばつかりがほんの事と¥Jフシ¥¥わつと泣出す門「ト」の口。¥Jウ¥¥空にしられぬ¥Jフシ¥¥雨の足
¥J中ハル¥¥かはく。袂もなかりける。¥J詞¥¥ヤイ++伊五めどこにおると。¥J地色ウ¥¥呼立「テ」出る主「ジ」の¥Jハル¥¥義平。アイ++¥Jウ¥¥爰にとかけ入「ル」
跡。¥Jウ¥¥/尻目{しりめ}にかけて¥J色¥¥たわけめが。¥J詞¥¥奥へいて/給仕{きうじ}ひろげと。¥J地色ウ¥¥/呵{しかり}追「イ」やり門「ト」の戸を。¥Jウ¥¥さすを押「サ」へて。¥J詞¥¥コレ
旦那殿。いふ事が有「ル」爰明「ケ」て。¥J地色ウ¥¥イヤ聞事もなしいふ事も。¥Jウ¥¥/内証{ないしやう}一「ツ」の¥Jハル¥¥/畜生{ちくしやう}め。¥Jウ¥¥/穢{けがら}はしいそ
こ¥J色¥¥のこふ。¥J詞¥¥イヤ親と一「ツ」所でない/証拠{しやうこ}。それ見て疑ひ/晴{はれ}れてたべと。¥J地色ウ¥¥戸の/透{すき}よりも投「ゲ」込一「ツ」/通{つう}。
¥Jハル¥¥/拾{ひろ}ひ取「ル」間に付「ケ」込「ム」女房。¥Jウ¥¥夫「ト」は書「キ」物一「ト」目見て。¥J詞¥¥コリヤB前「ン」やつた/暇{いとま}の状。是戻してどふする
のじや。どふするとは聞へませぬ。親了竹の悪「ル」/工{だくみ}は。/常{つね}からよう/知「ツ」ての事。/譬{たとへ}どの様な事
有迚。なぜ隙状をくだんした。¥J地色ハル¥¥持「ツ」て戻ると/嫁{よめ}らすと。思ひも寄ぬ/拵{こしらへ}。¥Jウ¥¥嬉しい顔で/油断{ゆたん}
させ¥Jウ¥¥/涕紙袋{はながみぶくろ}の去「リ」状を。¥Jウ¥¥盗「ン」でわしは迯「ケ」て¥J中¥¥来ました。お前はよし松¥Jハル¥¥/可愛{かはい}ないか。¥Jウ¥¥去「ツ」てあ
の子を/継{まゝ}母に。¥Jウ¥¥かける気かいの/胴欲{どうよく}なと。¥Jウキン¥¥すがり歎けば。¥J詞¥¥ヤア其恨は/逆{さか}ねち。此内を
いなす折。言/W{ふくめ}たを何「ン」と聞た。様子有「ツ」て其方に隙やるでなし。暫「シ」の内親里へ帰つ
て居よ。/舅{しうと}了竹は。元「ト」九太夫が/扶持{ふち}人「ン」。¥J地色中¥¥心とけねば/子細{しさい}はいはぬ。病気の/体{てい}にもて
なし。¥Jウ¥¥/起臥{おきふし}も/自由{じゆう}にすな。¥Jウ¥¥/櫛{くし}も取「ル」なと言付「ケ」やつたを¥J色¥¥なぜ忘れた。¥J詞¥¥さんばら/髪{かみ}て居「ル」
者を。嫁にとろとは言ぬはやい。¥J地ハル¥¥何「ン」の/儕「レ」がよし松が¥J色¥¥かはいかろ。¥J詞¥¥/昼{ひる}は一「チ」日あほうめが。だましすか
せど夜「ル」に成「ル」と。/嚊{かゝ}様++と尋おる。かゝは追「ツ」付「ケ」。もふ爰へと。¥J地色ハル¥¥だましてねさせどようね
いらず。/呵{しかつ}てねさそと/擲{たゝき}付「ケ」。¥Jウ¥¥こはい顔すりや声上「ケ」ず。¥J詞¥¥しく++泣「イ」ておるを見ては。身ふし
が/砕{くだけ}てこたへらるゝ物じやない。¥J地色ハル¥¥是を思へば親の/恩{おん}。子を¥Jウ¥¥持てしるといふ。¥Jウ¥¥不/孝{かう}の/罸{ばち}と我身
をば。¥J上¥¥/悔{くやん}で¥J中フシ¥¥夜と倶泣明「カ」す。¥J詞¥¥夕部も三度抱上「ケ」て。もふ連「レ」ていこ。抱いていこと。門「ト」口X出
たれ共。一夜で/堪納{たんのう}するでもなし。五十日隙どろやら。百日/隔{へだて}ておこふやら。知「レ」ぬ事
に/馴染{なじま}しては。跡の難「ン」義と五町三町。¥J地ハル¥¥ゆぶりあるいて/擲{たゝき}付「ケ」。¥Jウ¥¥ねさしてはそつとこかし。¥Jウ¥¥我
/肌{はだ}付「タ」れば/現{うつゝ}にも。¥Jウ¥¥乳をさがしてしがみ付「キ」。¥Jウ¥¥わづかな間の別れでさへ。¥Jウ¥¥恋こがるゝ物一「ツ」/生{しやう}を。
¥Jウ¥¥引「キ」わけふとは¥J色¥¥思はね共。¥J詞¥¥/是非{ぜひ}に及ばず/暇{いとま}の状。了竹へ渡せしを。/内証{ないしやう}にて受「ケ」取ては。親
の/赦{ゆる}さぬ不義の/科{とが}。心よからず持て帰れ。是Xの縁。/約束{やくそく}事。死「ン」だと思へば事
済「ム」と。¥J地色ハル¥¥切「レ」/離{はなれ}よき男気は。¥J上¥¥/常{つね}をしる程¥J中フシ¥¥猶悲しく。¥J詞¥¥此家に居るとお前が立「タ」ず。内へい
ぬると嫁にやならず。¥J地上¥¥悲しい者はわたし一人「リ」。¥J詞¥¥是が別れにならふも知「レ」ぬ。¥J地ハル¥¥よし松をおこして
ちよつと逢して下さんせ。¥J詞¥¥イヤそれならぬ。今逢て今別るゝ其身。跡の思ひが猶不/便{びん}な。
¥J地色ウ¥¥わけて今宵は¥Jハル¥¥お/客{きやく}も有。¥Jウ¥¥くど++いはずと早く¥J色¥¥おいきやれ。¥J上¥¥夫「レ」でもちよつとよし松に。¥J詞¥¥ハテ扨
/未練{みれん}な。跡の難「ン」義を思はずやと。¥J地色ウ¥¥むりに引「ツ」立「テ」去「リ」状も。¥Jウ¥¥/倶{とも}に渡して門「ト」先「キ」へ¥Jハル¥¥心/強{つよ}くも¥J色¥¥突
出し。¥J詞¥¥子がかはゆくば了竹へ。/侘言{わびこと}立「テ」て春Xも。かくまひ/貰{もら}はゞ/思案{しあん}もあらん。¥J地ウ¥¥それ
叶はずば¥Jハル¥¥是限りと門「ト」の戸フシしめて¥Jフシ¥¥内に入。¥J地上¥¥ノウ夫「レ」が/叶{かな}ふ程なれば。¥Jウ¥¥此思ひはござんせぬ。¥Jウ¥¥つれ
ないぞや¥J中¥¥我夫「マ」。¥J詞¥¥/科{とが}もない身を去「ル」のみか。我子にX逢さぬは。あんまりむごい/胴欲{どうよく}な。¥J地色ハル¥¥顔
見るXはなんぼでも。¥Jウ¥¥いなぬ++と門「ト」打たゝき。¥J詞¥¥情じや。/慈悲{じひ}じや。爰明「ケ」て。¥J地上¥¥寐顔成「リ」共見
せてたべ。¥Jウ¥¥コレ手を合せ拝ます。¥Jウ¥¥むごいわいの¥Jキンフシ¥¥とどふどふし¥J中ハル¥¥前「ン」後。不/覚{かく}に¥Jハル¥¥泣けるが。¥J地色中¥¥ハアヽ/恨{うら}む
まい¥J色¥¥嘆くまい。¥J詞¥¥なま中に顔見たら。かゝ様かと取付「イ」て。/離{はな}しもせまいし離「レ」も成「ル」まい。¥J地色中¥¥今宵
いぬれば¥Jハル¥¥今宵の嫁入。¥Jウ¥¥あすX待「タ」れぬわしが命。¥Jウ¥¥さらばでござる¥J中¥¥さらばやと。¥Jウ¥¥いふては戸口へ/耳{みゝ}
を寄「セ」。¥J上¥¥若「シ」や我子が声するか。¥Jウ¥¥顔でも見せてくれるかと。¥Jウ¥¥/窺{うかゞ}ひ聞「ケ」ど¥J中¥¥音「ト」もせず。ハアヽ¥Jハル¥¥ぜひ
もなや是Xと¥Jウ¥¥思ひ切てかけ出す¥J中¥¥向ふへ。¥Jウ¥¥目計「リ」出した大男¥Jハル¥¥道をふさいで¥J中¥¥引「ツ」とらへ。¥Jウ¥¥是はといふ
間も情なや¥Jハル¥¥すらりと抜「イ」て嶋田わげ。¥Jウ¥¥根よりふつつと/切取「ツ」て¥Jウ¥¥/懐{ふところ}Xを引「ツ」さらへ。¥Jウ¥¥いづく共
なく迯「ゲ」行し¥Jハヅミフシ¥¥/無法無息{むほうむいき}ぞ是非もなき。¥J地上¥¥ノウ/憎{にく}や腹立や。¥Jウ¥¥何者かむごたらしう髪切「ツ」て。¥Jウ¥¥書「イ」
た物X取「ツ」ていんだ。/櫛笄{くしかうがい}の盗人なら。¥Jウ¥¥いつそ殺して++と¥J中¥¥泣さけぶ。¥Jウ¥¥声に驚「キ」義平は思はず
¥Jハル¥¥かけ出しが。¥Jウ¥¥ハア爰が男の/魂{たましゐ}の¥J中¥¥乱「レ」口よと/喰{くひ}しばり。¥Jウ¥¥ためらふ中「チ」に¥J中¥¥奥よりも。¥J詞¥¥御/亭主{ていしゆ}++。¥J地色ウ¥¥義平殿
と¥Jハル¥¥立出る¥J中¥¥由良「ノ」助。¥J詞¥¥段々御/深切{しんせつ}の御/馳走{ちさう}。お礼は鎌倉より申越「サ」ん。猶跡/荷物{にもつ}の義。早
/飛脚{ひきやく}を以「ツ」てお頼申。夜の明「ケ」ぬ中「チ」早お/暇{いとま}。いか様。今暫し共申されぬ/刻限{こくけん}。道中御/堅勝{けんしやう}
で。御吉/左右{さう}を相待「チ」まする。/着{ちやく}致さば/早速{さつそく}/書翰{しよかん}を以「ツ」ておしらせ申そふ。返す++も此度の
お世話。詞でお礼は言。/尽{つく}されませぬ。ソレ/矢間{やさま}大/鷲{わし}御亭主へ置「キ」/土産{みやげ}。¥J地ハル¥¥はつと文吾十
太郎。¥Jウ¥¥扇を時の白「ラ」/台{だい}と乗「セ」て出たる一「ト」/包{つゝみ}。¥J詞¥¥是は貴公へ是は又。御内宝おその殿へ。¥J地ハル¥¥左少なが
らと指出す。¥J地ハル¥¥義平はむつと¥J色¥¥顔色かはり。¥J詞¥¥詞でいはれぬ礼と有「レ」ば。イヤコレ礼物受「ケ」ふと存し。命が
けのお世話は申さぬ。町人と見/侮{あなと}り。小判の/耳{みゝ}で/面{つら}はるのか。イヤ我々は/娑婆{しやば}の/暇{いとま}。貴
殿は残る此世の/宿縁{しゆくゑん}。御台かほよ御前の義も御頼申さん為。¥J地ハル¥¥寸「ン」志計「リ」と¥J中¥¥言残し。¥Jハルフシ¥¥表「テ」
へ出れば¥J色¥¥猶むつと。¥J詞¥¥/性根魂{しやうねだま}を見ちがへたか。踏付「ケ」た仕方あたいま++し。¥J地ハル¥¥/穢{けがら}はしと¥Jウ¥¥/包{つゝみ}し進「ン」物¥J中¥¥/蹴{け}
飛せば。¥Jウ¥¥包ほどけて内よりばらり¥Jハル¥¥女房かけ寄。¥J詞¥¥コレ是はわしが/櫛笄{くしかうがい}。切れた髪。ヤア++++此一包
は去「リ」状。ホイ扨はB前「ン」切たのは。ホウ此由良「ノ」助が大/鷲{わし}文吾を/裏{うら}道より廻らせ。根よりふつつ
と切「ラ」した心は。いかな親でも尼法師を。嫁らそふ共いふまいし。嫁に取「ル」者は猶有「ル」まい。其髪の
/延{のび}る間も/凡{およそ}百日。我「レ」々本望/遂{とげ}るも百日は過さし。討/課{おほ}せた後「チ」めで度祝言「ン」。其
時には/櫛笄{くしかうがい}。其切髪を/添{そへ}に入。¥J地ハル¥¥笄/髷{わげ}の¥Jウ¥¥三国一「チ」先「ツ」夫「レ」Xは¥J中¥¥尼の/乳母{うば}。¥J詞¥¥一「ト」/季{き}半「ン」季の
奉公人。其/肝煎{きもいり}は大鷲文吾同矢間十太郎。¥J地色ハル¥¥此両人が連「ン」中へ¥Jウ¥¥大事は/洩{もれ}ぬといふ¥J中¥¥請「ケ」判「ン」。
¥Jウ¥¥由良「ノ」助は/冥途{めいど}から/仲人{なかうど}致さん¥J色¥¥義平殿。¥J詞¥¥ハアヽ/重{ぢう}々のお/志{こゝろざし}。お礼申せ女房。¥J地色ハル¥¥わたしが為に
は命の親。¥J詞¥¥イヤお礼に及ばず。返「ン」礼と申「ス」も/九牛{きう※※}が一/毛{もう}。義平殿にも町人ならずば。倶に出達「ツ」
とのお望幸「イ」かな。兼て夜討「チ」と存れば。敵中へ入込「ム」時。貴殿「ン」の/家名{かめい}の/天{あま}河屋を直「ク」に夜
討の合「イ」詞。/天{あま}とかけなば河とこたへ¥J地ハル¥¥四十人/余{よ}の者共が。¥Jウ¥¥天よ。河よと¥J色¥¥申なら。¥J詞¥¥貴公も夜討
にお出も同前「ン」。義平の義の字は義臣の義の字。平はたいらか/輒{たやす}く本「ン」望。¥J地色中ハル¥¥早お/暇{いとま}
と。¥J合ウ¥¥立出る。¥Jウ¥¥/末世{まつせ}に/天{あま}を山といふ。¥Jウ¥¥由良「ノ」助が/孫呉{そんご}の/術{しゆつ}。¥J上ウ¥¥忠臣蔵共いひはやす。
¥Jウ¥¥/娑婆{しやば}の/言葉{ことば}の¥J中¥¥/定{さだ}めなき¥J色¥¥わかれ¥J上¥¥別れて。三重¥J上¥¥Sいでゆく*

江木鶴子 Mail:egi@ube-c.ac.jp
前田桂子 Mail:maeda@frontier-u.jp