山口地域情報科学研究会
―― 十周年特集号より(昭和53年6月1日発行) ----



会長挨拶

高浪五男(山口大学工学部)


 10年一昔という言葉がありますが、自然科学、特に情報科学の進歩は目ざましいものがあります。初期のリレー式や真空管式の計算機の時代は勿論、個々のトランジスタで論理回路を組み立てる時代は去り、(超)集積回路を用いた(超)小型コンピュータの時代が最盛になっております。集積回路技術の進歩はハードウエアの費用を激減させ、大容量ランダムアクセスメモリーをもつ大規模計算機の出現が見られるようになりました。一方、一般大衆も安価なマイクロ・コンピュータやメモリーを入手できるようになり、その昔ラジオやステレオを手作りしたと同じように小型ながらもコンピュータというものを作れるようになり、コンピュータが一層一般大衆に身近なものになってきました。他方、ソフトウエア技術の方は、依然人手による部分が多く、構造化プログラミング技法の導入による効率化が計られていますが、依然コンピュータシステムの制作費のかなりの部分をしめているようです。ソフトウエアなくしてコンピュータは動かず、この方面の研究は、前途洋々というか、前途多難というか、一層の研究が待たれております。

 当研究会はそのようなめまぐるしい情報科学技術のあけぼのと考えられる昭和42年6月1日その名も「山口地域情報科学研究会」という格調高いものとして、さらには社会に開かれた研究会として発足しました。以来、この会を支える山口大学、宇部工業高等専門学校、宇部短期大学、徳山工業高等専門学校、宇部興産株式会社、新日鉄株式会社光製鉄所、セントラル硝子株式会社宇部工場などの有志の方々、さらには計測自動制御学会の補助によって10年の歳月がたちました。この10年を迎えるとき、今までを振り返り、新たな躍進の糧とすべく、ささやかながら本特集号を企画しました。

 当研究会は上記のような山口地区の情報・制御・計測の各分野の研究者や技術者の学問的討論の場としての役割を果たしており、後記の”10年間の歩み”に見られるように、数多くの発表がなされております。また、この会の特徴は形式ばらないことで、お互いの親睦を深めるという役割をも果たしております。このような運営の仕方、さらに幹事の方々の努力が10年の歴史を築いてくれた要因であろうと考えられ、全国的に見ても稀有のことと思います。

 さて、10年たった現在、少しマンネリ化も感じられないこともありませんが、本年2月には、下部組織として山口マイコン研究会を発足させ、毎月1回の例会をもって活発に活動しているなど、着実な発展をしております。今後とも、山口地区の研究者や技術者にとってより有益な、より魅力ある会にしたいと考えております。今後の課題としては、研究会への出席をもっと活発にすることです。そのためには、例えば会の運営の仕方として、ある一定の周期で各地域で研究会を開くとか、各地域の意見などがよく反映されるようにするなど横に広がった地域の意思の疎通をもっとよくしてはと考えています。また、会の実態(会のメンバー、事務局、役員幹事の選出など)を明確にした方がよいようにも思われます。あれこれ考えられますが、研究会での席で諸氏のご意見や名案を期待しております。

 10年のキャリアーを大切にして今後の一層の発展を期待し、そのために微力ながらも尽力できれば幸いと考えております。(昭和53年6月1日)

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