3タイプのカラー選択システム

〜Windows用ツール開発〜


佐藤 隆司、元永 貴子、斎藤 高志、藤竹 順平
上圓 千鶴子、乃一 友章、山折 昌子
(指導教員 吉田 信夫)


はじめに

 コンピュータグラフィックスやホームページ作成などにおいて色を扱うには、色光の三原色とされる、赤(R)、緑(G)、青(B)の配合比とディスプレイ色との関係が容易に把握でき、しかも、そのRGB値は10進、16進のいずれでも確認できることが必要である。
 Windowsシステムには、画面設定の中にカラー選択ツールが備えられているが、これは何回かのメニュー選択を重ねて立ち上げなければならないことと、10進でしか表示されないことに不便さを感じる。
 そこで私達はカラー選択ツールの試作を行い、実用に供しうる3つのタイプのシステムを開発したので報告する。

システムの概要
(a) 加法混色(b) 減法混色
図1 加法混色/減法混色タイプ

(a)加法混色/減法混色タイプ

 本タイプは、ウィンドウ上部のメニューバーに設けた混色方法メニューで加法/減法を切り替える方式のシステムである。特に加法混色のプログラムは、本カラー選択システムの基本となる。
 減法混色は、絵の具の混色である。絵の具の3原色は、シアン、マゼンタ、イエローとされており、子供の時から絵の具を用いて絵を描いてきた私達にとっては、光の混色より絵の具の混色に馴染みが深い。
 絵の具のシアンは、GとBの色光を反射し、Rの光を吸収する。このことからたとえばシアンを増すことは、ディスプレイを標準出力装置とするコンピュータでは、Rを減ずることによって実現できるので、表1に示す機構により、減法混色も加法混色とほぼ同様のアルゴリズムでそのシステムを構成することができた。
表1 減法混色の表示機構
加法混色 減法混色
ユーザ操作 表示色 ユーザ操作 表示色
Rを増す Rを増す シアンを増す Rを減ずる
Gを増す Gを増す マゼンタを増す Gを減ずる
Bを増す Bを増す イエローを増す Bを減ずる

(b)色相環タイプ

 本タイプはマンセル色相環に類似の色相環により基本色が選択でき、さらに選択された基本色に対して256段階の明度と彩度を変えることができるシステムである。色相環は図3 に示す方法により、最も彩度の高い768色のカラーグラデーションを円環状に配したものである。
図2 色相環タイプ 図3 色相環の表示機構


(c)xy色度図タイプ

 本タイプは、色相をCIE1931XYZ表色系のxy色度図により選択できるものである。
 xy色度図の色の表示は次の4式により、表示色とその表示点の座標とを算出し、行っている。
 x=(0.49000r+0.31000g+0.20000b)/m  (1)
 y=(0.17697r+0.81240g+0.01063b)/m  (2)
 z=(0.01000g+0.99000b)/m       (3)
 m=0.66697r+1.13240g+1.20063b     (4)
 基本色の選択はxy色度図の三角形内部の選択点から3頂点への距離を用いて算出した。
 xy色度図から選択した色は三角形の垂心に近いほど彩度が低いため、選択した色の色相は変えずに、彩度を最大化し、その後、図中右のボリュームにより256段階で明度と彩度を変化できる方式である。
 本タイプは色相環タイプとほぼ形態を同じくするが、色相環では表示できない無彩色を選択できるところに特徴がある。
図4 xy色度図タイプ

おわりに

 本システムはVisual C++6.0を使用して作成したものである。当初はプロトタイプの作成を目的としたが、ボトムアップ的に実用に供するシステムができ上がった。
 今後比較的容易に実現できる改良点を挙げる。
  ・ドラッグによるカラー変更機能を追加する
  ・色相環タイプに無彩色選択機能を追加する



参考文献
高木幹雄・下田陽久監修 「画像解析ハンドブック」 東京大学出版会(1991)
金子隆芳著 「色彩の科学」 岩波新書(1988)