GUIについての実験的検討


岩田 幸恵、岡 由紀乃、、瀧野 美織、縄田 佳子、橋本 佳奈、廣松 久美 
(指導教員 吉田 信夫)


1.はじめに

GUI(Graphical User Interface)とは、人間とコンピュータのインターフェイスであって、ウィンドウ、アイコン、メニュー等のグラフィック表示で操作画面を構成し、マウスと画面上のカーソルによってユーザの直感的な操作を支援するものである。実例を挙げて言えば、私達がMicrosoft Windowsで使用している形態のインターフェイス形式である。まず私達は、GUIシステムを作成する技術を習得するために、下記のようないくつかの基本となるプログラムやペイント系のシステムを作成した。そして、GUIについての、定量的な検討をスタートを始めるにあたり、マウスでクリックする数値データ入力システムを作成し、ゼミメンバーを被験者としてキーパッドの大きさの影響について実験を行った。その結果、一つの知見を得たので、報告する。 このGUIを使って、私達は技術を修得するための、いくつかの基本となるプログラムやペイント系(お絵かき)のシステムを作成した。  GUIについての、定量的な検討をスタートさせるにあたり、マウスでクリックする数値データ入力システムを作成してゼミメンバーを被験者としてキーパッドの大きさの影響について実験を行い、1つの結果を得た事について報告する。

《基本技術を習得するために作成したプログラム》
〇一点を表示するプログラム
〇直線を描くプログラム
〇スキャニング
〇円を描く
〇渦巻き
〇軌跡
〇ペイントシステム(お絵描きシステム)
第1図ペイントシステム(お絵描きシステム)


2.数値データ入力システムの概要

2−1.システム概要

システムの概要を第1表に示す。

第1表
数値キーパッドの大きさの倍率を設定
ディスプレイ装置との接続
リソースーの作成

・フォント(倍率別)
・マウスボタンが押された、というイベントマウスを解除
・グラフィックコンテキストの作成
・色の設定
入力データ記録用のファイルをオープンする(ファイル名:実時間入力)
数値キーパッドの外観の作成

・表示部
・[0]〜[9]の数値ボタン
・表示部に表示された数字列の右端の数字を消去する[Back]ボタン
・表示部に表された数字の全てを消去する[C](Clear)ボタン
・1つの数字列の入力を完了し、ファイルに書き込む[=]ボタン
・入力前の時刻を記録する[S](Start)ボタン
・入力後の時刻を記録し、差(経過時間)をファイルに書き込む[E](End)ボタン
・数値キーパッドを終了する[OFF]ボタン
・[-][+]は現在機能なし
While(1)
イベントを所得する
マウスが押された(イベントタイプ)
その点の座標(xs,ys)を所得

・[0]〜[9]の数値ボタンの位置
 数値を組み立て(既入力値を10倍し加算)
 表示部に表示
・[Back]ボタン
 組み立て中の数値LSD(最小桁)を削除しその数を表示
・[C]ボタン
 組み立て中の数を消去
・[=]ボタン
 組み立てた数をファイルに保存、後、次にすぐ入力できるよう[C]ボタンと同様、画面の数字列を消す
・[S]ボタン(入力前)
 現在の時刻を記録(ts)
・[E]ボタン(入力後)
 現在の時刻を記録(te)、後t=te-tsの計算結果をファイルに保存(t:入力にかかった時間)
・[OFF]ボタン
 Yes-Break
 No
ウインドウクローズ
ディスプレイの切断

2−2.使用方法

数値データ入力キーパッドの外観を第2図に示す。
数値データ入力システムの使用方法の概要を第2表に示す。


第2図 数値データキーパッド

第2表
数値データ入力システムの使い方 記録ファイルの形式


*数値データキーパッドの大きさの倍率
表示例:0.7

*入力した数値群
表示例:1670
表示例:394028
表示例:5590281
表示例:  :
表示例:  :


*入力するのに所要した時間(秒)
表示例:142sec

記録ファイル名を入力
数値データキーパッドの大きさの倍率を実時間入力
[S]ボタンを押す
―――「1670」を入力する場合
@[1],[1],[7]の数値ボタンを押す
A[2]の数値ボタンを押してしまう
B[Back]ボタンで1172の2を取り消し、[0]を入力
C1170ではなく1670に訂正
方法1:[Back]ボタンを3回押してやり直す
方法2:[C]ボタンを押して最初から入力し直す
D[=]ボタンで入力完了
@〜Dの操作を繰り返して、データを入力していく
[E]ボタンを押す(経過時間がカウントされる)
[OFF]ボタンを押して数値データ入力システムを終了


3.実験方法

ディスプレイ画面上でのキーパット全体の大きさがおよそ60mm×40mmとなるように基本の大きさを設定し、その基本形を基にして、面積比が1/2、2、4、8倍の、基本形を含めて第3図のような5つのタイプに設定した。入力データの個数についても少ない場合と多い場合の影響を検討するため10個、20個、30個、40個、そして50個の5つのケースを設定して、25回のデータ入力実験を行った。しかし、1度の入力では、入力ミス等によるデータのバラつきが生じうるので、すべて3回づつ入力を行い、その平均値をとった。


第3図 5つのタイプのキーパッド

第4図 数値データキーパッドの大きさ(概略値)



4.実験結果

第4図〜第10図までは被験者7名によるデータ入力パッドの長さの比に対する入力時間の変化である。パラメータは入力データの個数になっている。長さの比が1のデータ入力キーパッドの大きさは先にも述べたとおり、ディスプレイ上で全体が60mmで横が40mm、1つのキーボードの大きさが縦・横ともにほぼ6mmである。 第11図〜第17図までは長さの比を面積の比に変換した結果である。また、第18図〜第24図はデータ個数に対する入力時間の変化を表したものになっており、さらにこれらのデータを基に1クリックに要した時間の変化を求め、グラフ化したものが第25図〜第31図である。第32図〜第35図は6人のデータを集計し平均した結果である。

第4図
第5図
第6図
第7図
第8図
第9図
第10図
第11図
第12図
第13図
第14図
第15図
第16図
第17図
第18図
第19図
第20図
第21図
第22図
第23図
第24図
第25図
第26図
第27図
第28図
第29図
第30図
第31図
第32図
第33図
第34図
第35図


5.考察

まず、私達ゼミメンバー6人の平均値では、1クリックに要する時間を見てみると、第35図より大きさの長さの比が2(面積比が4)の近くが一番操作しやすいということが分かった。しかし、個人差はあり、1名の被験者は2.8がもっとも入力時間が短いという結果が得られた。当被験者も、第19図より倍率が大きいほど疲労度が少ないということが分かった。他の2人の被験者も、これほど顕著ではないが同じ傾向が見られる。しかし、このような傾向を示す3人の被験者(橋本・広松・縄田)は、短期間に集中してデータを採った事もあり、後になるほどデータ入力の数値の並びに慣れたことも考えられる。この点については、今後、実験方法を検討する必要がある。

ゼミメンバーの感想をまとめて、それを定性的な実験結果とすると、長さの比が0.7のキーパッドは小さすぎてマウスカーソルをキーに合わせることに神経を使い、マウスのコードの柔軟性までも気になると感じられる。データ量が増加し、データ入力時間が長くなると非常に疲れる。2.8のキーパットは動く範囲が広いので打ちにくいと予想されたが、実際にディスプレイで使用し、実験してみると2.8の方が人にとって優しいと感じられた。ただ、2.8を超えたら、その長所と短所が、どのように現れるかということは問題点である。このような面についてもさらに深く検討して行くには、操作したすぐ後に脈拍数など生理的な変化を調べてみるとさらに研究を進めることができるであろう。

6.おわりに

私達は、GUIシステムを日常利用しているが、どのような形式のGUIが使いやすいか、疲れないかなどを把握したいと思い、今回その研究の第一歩として以上のような実験を行い、一応の結果を得ることができた。しかし今回のデータ採集実験は、被験者に非常に過重な時間と疲労を伴い他人に委ねることができなかったので、ゼミのメンバーが行った。したがって、この研究の目的の1つでもあるコンピュータを初めて使用する人を対象にしたデータが得られなかった。初心者を対象としたデータ採集方法にはもう少し検討の余地がある。また、今回の実験は第一歩であって、今後次のような定量的実験を行いたいと思う。

1.大きさの影響を引き続き調査・検討する
2.色の影響について調査・検討する
3.新しい形式のGUIを検討する